ノックアウトオプションは、通貨ペアだけでなく、株価指数や商品(金など)でも売買できます。そこで今回は、ノックアウトオプションで日経平均株価をトレードする案を考察してみます。
日経平均株価の推移
新型コロナウイルス問題を受けて、日経平均株価は大きく下落しました。2020年初めには24,000円くらいだったのに、この記事を書いている時点では、19,000円くらいの水準です。
(記事を書いた日の終値は、19,300円台です。しかし、ノックアウトオプションは、ほぼ24時間取引可能です。よって、日経平均株価も、時々刻々と変化していきます。)
一時は、16,000円を割り込む水準まで下落しました。下は、IG証券の取引画面とチャートです。
不自然な株価の可能性
上の月足チャートは、2010年くらいからの長期チャートです。アベノミクス前からの様子が分かります。このチャートを見ると、一つ不自然な点に気が付くかもしれません。
それは、現在の株価です。2015年~2016年当時と同じ水準になっています。
2015年~2016年当時と現在の経済状況を比較すると、同じくらいでしょうか。おそらく、この質問への回答は「NO」です。現在の方が、圧倒的に厳しいです。
2008年のリーマンショック当時の経済状況より、現在の方がひどいかもしれません。当時は、大変厳しかったですが、自由に外出できましたし、経済活動そのものは可能でした。
ところが、現在は「外出するな」と言われる状態です。経済活動そのものが制約を受けています。外出して経済活動することは、新型コロナウイルスへの感染リスクを伴います。各地の学校等も休校になっています。
この状況なのに、株価水準は2015年~2016年当時の数字です。すなわち、株価は実体経済よりも高すぎる可能性があります。
株価が高い(かもしれない)理由
「現在の株価は実体経済に比べて高すぎる」という考え方が、適切だとしましょう。では、この株価水準で推移している理由は何でしょうか。
数多くあるでしょうが、ここでは3つ出してみます。
- 現在は下落過程にあり、将来はもっと下がる
- 新型コロナウイルス問題の早期収束を期待した価格形成
- 日銀による買い支え
これらの理由が正解かどうか、不明です。しかし、日銀による買い支えが効いていることは、間違いなさそうです。日銀から、大変な金額が株式市場に流れ込んでいます。
このまま日銀が頑張り、その間に市場のパニック状態が落ち着き、さらにワクチンが開発・実用化されれば、株価の下落幅は意外に小さくて済むかもしれません。
それどころか、ワクチン実用化の報道とともに、株価は一気に吹き上げるかもしれません。
この状況で、トレードという視点で考えたとします。「ワクチン実用化が遅くなるかもしれないし、もしかしたら、もっと大きく下落するかもしれないな」と。
そこで、日経平均株価を売る戦略を考察してみます(将来の株価が確実に下落するという意味ではありません)。
インバース型ETFは難しいかもしれない
将来の株価が下落すると想定する場合に、どの方法が最も良いか考察してみます。現在(2020年4月)のような不確実性が高い状況では、インバース型ETFの取引は難しい面が出てくるかもしれません。
インバース型ETFとは、「株価が下落したら、価格が上昇するETF」です。株価の下落を期待する場合は、インバース型ETFを買うことになります。
では、日経平均株価の推移を見てみましょう。下の日足チャートは、日経新聞ホームページからの引用です。
東京証券取引所での立会時間(売買可能な時間)は、1日に5時間しかありません。その結果、上のチャートのように窓がたくさんできます。
現在の株価市場はボラティリティが高くなっており、ニュース一つで株価が大きく動きやすいです。窓が大きいと、どうしても取引が難しくなります。
PTS市場でデメリットを緩和
このデメリットの回避には、PTS市場(私設取引市場)が有効です。と言いますのは、朝から深夜まで取引可能だからです。
PTS取扱い業者で有名どころは、SBI証券、松井証券そして楽天証券です。これら3つの証券会社で取引すれば、1日の多くの時間で取引可能です。
しかし、深夜0時から午前8時20分までの間は、取引できません。この時間帯にビッグニュースが飛び込んできたら、少々嫌です。
自分の期待する方向に向けたニュースなら歓迎ですが、逆だとすると、冷や汗をかくことになります。
くりっく株365が有効
この問題を回避するには、くりっく株365が有効です。くりっく株365を使うと、1日あたり22時間30分くらいの取引時間を確保できます。日経225のCFDを取引できます。
なお、「毎日、長時間相場に向かわなければなりませんよ」という意味ではありません。取引するのは、自分の好きな時間帯で構いません。何かニュースが飛び込んできて、「取引しないと!」という時に取引できる、ということです。
くりっく株365でも回避が難しい問題
くりっく株365は、極めて有効なツールです。しかし、くりっく株365をもってしても、少々難しい問題があります。
それは、窓です。くりっく株365は、1日24時間近く売買できますが、週末は取引できません。すなわち、週末に大きな動きがあって月曜日の相場再開を迎えると、先週末終値から大きく乖離した価格でスタートすることがあります。
下は、日経225の日足チャートです(東京金融取引所ホームページからの引用)。チャート内に、白い丸を2つ描きました。普段なら、窓ができても無視できる大きさかもしれません。
しかし、新型コロナウイルス問題を受けて相場は大荒れです。窓の大きさが1,000円近くになっています。さすがに厳しいです。
しかも、上のチャートで分かります通り、「窓は埋まる」の通説が破られています。
例えば、買いポジションを持っていたとして、月曜日に大きな窓で一気に含み損が増えたとしましょう。「窓は埋まるから、ここは我慢」と耐えていたら、傷口がとんでもなく広がってしまったという惨状になります。
くりっく株365の日経225は素晴らしいトレード対象ですが、この点に注意が必要です。
ノックアウトオプションで日経225を取引
「トレードチャンスで取引したいから、1日24時間近く取引できる方が良い。それでありながら、巨大な窓が発生してしまう場合の損失を抑えたい。」
こういった希望を重視するなら、IG証券のノックアウトオプションが候補になります。ノックアウトオプションは通貨ペアでの取引が有名ですが、株価指数でも売買できます。
下は、日経225の取引画面とチャートです。
ノックアウトオプションでも、週末の取引はお休みです。このため、上のチャートの矢印部分の通り、窓ができてしまいます。これは避けることができません。
しかし、ノックアウトオプションなら、損失額を限定的にできます。
取引例
例えば、大きな下落を狙って、日経225のベアを買うとします(株価が下落すると利食いできるタイプ)。19,000円で買って、損切り(ノックアウトレベル)は19,500円に設定したとします。
ところが、日曜日に、「ワクチン実用化に目途が立った!」という素晴らしいニュースが世界中を駆け巡ったとします。
誰にとっても素晴らしいニュース…のはずですが、下落を狙って取引していた人には、大変な事態となるかもしれません。と言いますのは、月曜日始値で巨大な窓ができるかもしれないからです。
先週金曜日終値は、19,200円だったとしましょう。月曜日始値で窓ができて、20,000円を余裕で超えたとします。
一般的な金融商品なら、始値が20,500円だったら、損切り価格は20,500円になります。逆指値で19,500円を指定していても、それは考慮されません。容赦なく20,500円で損切りです。
ノックアウトオプションにスリッページは存在しない
ノックアウトオプションの場合、このような例は発生しません。ノックアウトオプションでは、ノックアウトレベルで確実に損切りできます。窓ができようが何だろうが、損切り価格は守られます。
上の例でいえば、ノックアウトレベルを19,500円に設定していれば、必ず19,500円で損切りできます。これが、ノックアウトオプションで日経225を売るメリットの1つです。
日経平均株価の下落を狙って取引したいけれど、反転上昇する場合が怖くて取引できない場合、ノックアウトオプションが有力な候補になるでしょう。